官能的なスクリャービンはけしからん!神秘主義者のスクリャービン大先生 <1872-1915> 「法悦の詩」という邦題だけを読むとイマイチぴんとこないが、原題である 「ポエム・ド・エクスタシー」と聞くとぶっ飛ぶのがスクリャービン大先生の問題作、交響曲第4番。 「エクスタシー」ですよ。自作にこんな題名を付けた人、他にはいらっしゃいません。 いやはやこのお方のぶっ飛び度も桁外れ。最初の頃は正常なロマン派音楽を書いていたが、30歳近くになるにつれ、ニーチェの哲学に心酔。自分の誕生日が12月25日だったことから神智主義(人間には霊的能力があって、神を見ることが可能なのだという思想)に傾倒、遂には彼独自の 「神秘和音」(4音の和声の積み重ね)を多用した非常に感覚的な作風へと没入していく。 その作風の代表が交響曲第3番「神聖な詩」と第4番「法悦の詩」。 「神聖な詩」もすごいが、「法悦の詩」は本当に異常な音楽だ。トランペットが高らかに性的な興奮の盛り上がりを告げ、約20分間の演奏の間に、その主題が姿形を少しづつ変えながら、寄せては返す極彩色の官能の波のように繰り返し繰り返し聴く者を包み、圧倒する。(ようするにずっと頑張ってる、ということですな) 特に最後の三分間のクライマックスは交響曲史上、他に類を見ない圧倒的な音響空間を作り出している。ホルン8本、トランペット5本のすさまじい咆哮によって官能のうねりは 忘我の境地に達し、もはや聞き手は茫然自失、頭は真っ白になる。(ようするに燃え尽きるわけですな) ありえない、こんないやらしい音楽を書いたスクリャービンは本当にけしからん!!・・・でも素晴らしい! このお方は43歳で亡くなっているが、最後に構想していたのが大管弦楽、混声合唱、芳香(匂い)、色彩投影などによる「神聖劇」(もはやなんでもアリ、みたいなものですな)なるものだった。作者死亡により未完となったが、もし完成していたらと思うと残念でならない。 このけしからん音楽はそのユニークさ、独創性において空前絶後の作品。まだの方は、是非一度聴いてみて頂きたい。私生活においては四人の子供と妻を捨てて若い愛人に走ったくらいで、ワーグナーほど人様には迷惑をかけなかったようです・・ いやあ、 けしからん音楽って、本当にいいもんですね。それではまた次回、お会いしましょう!(水野晴郎さん、復帰おめでとうございます) シノーポリの病的な演奏がステキです スクリャービン:「法悦の詩」|交響曲第3番「神聖な詩」 プレトニョフの色彩感もいいですね スクリャービン:「神聖な詩」|「法悦の詩」 ジャンル別一覧
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